いざ飛鳥へ⑥ 国家発祥の地が過疎に?!インバウンドの恩恵からも外れるなんてなぜ?(番外編)


コロナ騒ぎが収まり、日本各地に外国人観光客が押し寄せているという。これだけ円安なのだから当然だろう。ところが、飛鳥・明日香にも、桜井市にも観光客は実にまばらだった。驚くほどだ。しかも、どうやら過疎も進んでいるらしい・・・。なぜか。

修学旅行で行ったら、教師はどう教えるのか・・・

ひとことで言えば、飛鳥は分かりにくい。背景を知らずにアチラやコチラの説明文だけ読んでいると「どうなっているの?全然つながらない。矛盾している!」と腹を立てても不思議はない。

飛鳥宮に行くときの最寄り駅は近鉄の飛鳥駅か橿原神宮前駅である。後者の橿原神宮が祭っているのは初代天皇と言われる神武天皇である。明治天皇肝いりで明治になってできた神宮。神武天皇が第一代天皇として紀元前660年に即位しこの地から日本という国がはじまりました、と高らかにアピールしている。2016年にも天皇夫妻(現在の上皇夫妻)が訪れている。

ところが飛鳥遺跡などでは神武天皇とのつながりは一切説明にない。つまり駅そばの神宮では紀元前660年に日本の国がはじまったとアピールしている一方で、駅から少し離れた飛鳥の遺跡では7~8世紀になってこの地で国の形が定まったと説明する。この地に修学旅行で訪れる中学生や高校生がいるのか分からないが、もし来たら教師はどのように説明するのだろう。

箸墓古墳の傍らに立つ宮内庁の立派な看板(?)  
第7代孝霊天皇の娘である倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめのみこと)の墓であり、皇族の陵墓なので宮内庁が管理し立ち入りを禁止するという。しかし孝霊天皇は記紀の創作であり実在した可能性は学術的にはほぼないとされている。一方で、この箸墓古墳は卑弥呼の墓かもしれないとされるが学者が調査に入ることもできていない。

さらに分かりにくい例は箸墓古墳である。上の写真のように、学術的には実在していないと考えられている皇族の陵墓であるという看板を宮内庁が立て立ち入りを禁止している。ところが考古学者の間ではここは卑弥呼の墓ではないかという説が出ていて、桜井市内でもそうした表現を見かける。税金で賄われている宮内庁が壁となって、学問的な探求を妨げているという構図にしか見えない。

こういう分かりにくさは、観光地としてのブランド構築にとってはマイナスの効果しかない。飛鳥/明日香は世界遺産の登録を働きかけている。地元の方々の立場は複雑だろうが、こうした矛盾が世界遺産認定時に問題にされた方が中長期的には地元にメリットがあると感じるのだがどうだろうか。

このような状況の中で、国家発祥の地といえる桜井市であるにも関わらず、ここに近鉄線の特急は止まらない。桜井市自体が過疎になり始めているようだ。駅近くのホテルも、市が熱心に誘致してようやく建ったらしい。桜井市だけの問題ではないのだが、奈良県の最低賃金は2023年10月に40円上がってようやく900円台に乗せたレベルである。国家発祥の地なのに・・・。

2023年10月に40円上がって900円台に乗せた奈良県の最低賃金。大阪や京都まで電車ですぐなのに…。



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