秘密基地で休日を過ごすようになったのは、月並みながら定年退職がきっかけである。
振り返ればバカだったなぁと思うのだが、なにか趣味を持ってプロ顔負けの腕前になってみようかといったことも考えた。音楽教室の無料体験を試したこともある。
でも、どうもしっくりこない。
ひとりで趣味の世界に没頭するようなことを言いながら、仲間に家族に自慢気に披露するシーンをイメージしているだけなのではないのか。そもそも趣味ってなんだ?―ーーそんなことに気付くと天邪鬼かもしれないがもはや“趣味”は足を踏み入れるところではないと見極めた。
そう考えると気分はスッキリと楽になった。そもそも、何かを目標にする、あるいは何か“意味”のある生き方などに縛られる必要はない。そうとなれば楽しいこと、いわば快楽追求型の生活はどうだ。うん、それがイイとなる。
そこで思い出したのが地方都市でひとり暮らしをした学生時代である。18歳でひとり暮らしを始めるとき、なんと胸が躍ったことか。とても楽しい時代だった。
ただしもちろん、青年期の自由は不安を抱えながらの状態ではある。将来に対する漠然とした不安、何物かを捕まえなければならないという焦燥感、そして寂しさと欲望との葛藤。しかし60歳をすぎれば、焦ることはない。所詮、55歳前後で死ぬはずだった(そのころ久しぶりに行った人間ドックで大病2件を発見されたが、
いずれもエレクトロニクスの発展がなければ実現できなかった最近の手術方法で復帰)。このあとはオマケの人生だ!
もう決めた、学生時代のひとり暮らしの再現だ。ということで、定年が間近になった冬、秘密基地の場所をここに定めた。場所探しにそれほど時間はかからなかった。前を向けば間近に商業施設や官公庁、振り返れば川や山野の自然が広がるこの場所に引き寄せられるようにたどり着いた。
もちろん、贅沢を言えばきりがない。でも、学生時代の家賃7000円のアパートに比べれば天国だ。学生時代は風呂はなく、トイレは共同で汲み取り式だった。今の21平米で家賃3万8000円のアパートには小さなユニットバスと水洗トイレ、お湯も出る。ベランダは北向きだけど窓は南向きの角部屋。洗濯機を置くスペースはないが、フロアに1セットずつ置かれたコインランドリーはこの部屋のすぐ横。
ここで、好奇心の赴くままどのような暮らしを送っているかは別の稿で。
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